循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

コロナ禍による認知症患者への隠れた影響とは

こんにちは、うしです。

 

 

 

今回はコロナによる隠れた影響として、つまりは面会制限のことになるのですが、医療者側としては最近感じている結構重要だと思っていることを書きたいと思います。

 

自分は北海道ですが、最近は関東関西と沖縄などの新型コロナウイルスが特に多く、少し温度差があるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

病院の面会、病状説明について

 

看護師さんの方が詳しいと思いますが、従来はお見舞いなどは比較的自由にできていました。日中は比較的自由に、夜間は不可が多いと思いますが、個室や病状が悪い場合には泊っている家族もいました。

病状説明については、科ごとに違うと思いますが、急性期病院の場合は外来時に1回、状態改善 or 悪化時に1回、安定していれば2週間前後ごとに1回程度なのではないかと

思います。主治医と時間を調整して病状や治療方針をシェアする感じですね。

手術等はラウンジや家族控室で待っていることが多いかもしれません。

 

しかし、コロナ禍になり、クラスター(院内感染)が非常に問題視されています。

ひとたび院内感染を起こすとその病院どころか周辺地域・医療機関にまで甚大な影響を与えます。そのため(少なくても北海道では)多くの病院が面会を制限し、原則不可にしている状況です。

病状説明もできるだけ電話で行い、状態が悪かったり今後の重大な方針決定の話の場合でも面談の人数を制限して(もちろんマスク着用や手指消毒を施行し)施行します。

手術についても(循環器内科ではカテーテル検査治療などですが)、当院では自宅で待機してもらい、必要あれば電話で結果を説明(無事終了したことを連絡)しています。

 

コロナ禍でずいぶんと変わったと感じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

終末期患者へのケアの変化

 

当院というより周囲の病院の情報での話ですが、

現在病院での終末期ケアが非常に厳しいと感じています。

 

というのも緩和ケアを中心にしている病院でさえ、面会制限が非常に厳しいからです。

 

あと数日しかなくても面会不可としている話も聞きますし、亡くなる直前まで院内来院不可のところも多いようです。

(心臓が止まりつつある状況で病院の建物の前で心臓がぴたっと止まるのを待って死亡確認するのでしょうか)

 

例えば自宅生活を頑張って家族としていたがんの終末期の方が、いよいよとなって苦しくなって病院に家族と行ったら、一番苦しいときに独りぼっちという状況が現に起きています。

 

それであれば、自宅での終末期を選ばれた方がいいのではと感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

終末期に発熱をしてしまったら

 

これは病院や考え方によって違うかもしれませんが。

 

終末期は免疫も非常に弱く、容易に肺炎や尿路感染症に感染します。

またがんであればそれに伴って発熱が出ることもあります。

 

これがいよいよいのときである場合、この熱をどうとらえるかなのですが、肺炎の可能性がある場合、当然免疫も弱いこともあり新型コロナウイルス感染(COVID-19)も考慮されます。

当院では独自のスコアリングでリスク評価をしていますが、おそらく肺炎でコロナリスクあり入院加療になる場合はPCR検査に移行することが多いと思います。

最近は本当に気軽にPCR検査をするようになったなあと思いますが、以前のブログにも書きましたが本来はそれによって方針が変わりうるのが検査であり、コロナのPCRを検査を施行する=コロナ感染を(少しは疑い)陽性であればコロナ感染であると言い換えられます。

つまり、どんなに念のための検査でも、コロナのPCR検査をするということは結果が出るまではコロナに準じて対応をするのが検査の役割を考えると妥当となります。

もしもこの間に亡くなってしまった場合は、後日PCR陰性とわかっても家族との面会はできません。

自分個人がこのシチュエーションに出会ったことはありませんが、ある意味PCR検査をする最大のデメリットかもしれません。

 

これについては院外で心肺停止で運ばれたときも同様です。

事前に咳や味覚障害など訴えていて、急激に呼吸苦などで死亡した場合、新型コロナウイルス感染症をどの程度疑うかはその症例ごとですが、疑われて死体のPCR検査をした場合はご遺体との面会も困難となります。

ただし、死因というのは家族や医療者、何なら葬儀屋さんへの感染対策の他、その方にとっての最期の診断でもあり、また遺族たちの遺伝性(心臓突然死の親がいれば子も遺伝しやすいなど)という意味でも大変重要になります。

コロナのPCRをしたくないからしないということは難しいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

認知症患者へのケアの変化

 

今日のブログのタイトルに移りますが、自分としてはコロナ禍で認知症診療は大きく変わったと思っています。

というのも家族との病院での面会が厳しくなりました。

 

まず認知症などある高齢者が入院すると、突然環境が変わりせん妄という病的に寝ぼけたような状態になることが多いです。中には攻撃的になる人もいて入院生活を困難にさせます。

治療としては早く元の環境へ退院することですが、病状がよくないと退院できません。そんなときは家族の助け(面会)があるとすごく精神状態がよくなることがあります

 

まずそれがコロナ禍で困難なため、せん妄状態になった場合にはこれまで以上に精神薬を使用せざるを得ない状態と言えます。

 

また、せん妄でなくでも元々認知症がひどい場合、自己転倒や点滴等の自己抜針で受傷をするリスクの他、周囲の患者やスタッフの安全という意味で非常に困ることが多いです。正直言って、認知症がひどければ標準治療はできません

 

自分は

認知症=一種の寿命とも考えていて、せん妄などでなく認知機能の低下によって自分の病気が全く理解できず治療を受けさせてもらえないのであれば治療適応はないと考えています

 

実際には少し厳しい意見だと思われるとも思います。

家族にとっては大切な親であり、実際家族に対してだと言うことを聞くことがあります。

 

また病院は、特に夜間などは全ての患者さんを常時見ていることはできないため、ほっておいて転倒自己抜針リスクなどがある場合は身体抑制を同意のうえで致し方なくすることがあります。家族によっては拒否されることも多いですし、ニュースだと「身体抑制のリスク」なんて病院を悪のように報道されることもありますが、認知症患者さんは普通に殴ってきてこちらもケガすることもあるため、そんなんであれば入院治療はできません。

 

このような認知症で治療困難な場合は、率直に家族と相談になります。

 

自分は上記を包括して

 

「認知症もひどく標準治療ができない状態です。このままではスタッフの安全以上に転倒や自己抜針など入院治療によって本人もケガするリスクが高いです。自分としては、この状態は一種の寿命ともとれると思います。ご家族が了承希望されるのであれば最低限必要時夜間など、手袋など軽いもので身体抑制を並行しながら、24時間とは言いませんができる限り御家族の方にも寄り添って隣で見ていただいて、一緒に治療したいと思います。『もう年なので押さえてまで治療を希望されない』のであればできる範疇での治療になりますし、入院治療が困難であれば本来は厳しいですが外来の範囲で自然に見ていくというのも妥当とは思いますがどうでしょうか?」

 

と聞いています。

 

冷たいなあと感じられるかもしれませんが、これでトラブル起きたことはないですし、このように家族と寄り添ってできる治療を模索していくのが高齢者認知症などの患者さんの診療に大切だと考えています。

 

これが今できないのが自分としては厳しいと思っています。

 

 

先ほどのがこう変わります。

 

「認知症もひどく標準治療ができない状態です。このままではスタッフの安全以上に転倒や自己抜針など入院治療によって本人もケガするリスクが高いです。自分としては、この状態は一種の寿命ともとれると思います。ご家族が了承希望されるのであれば最低限必要時夜間など、手袋など軽いもので身体抑制を並行しながら、24時間とは言いませんができる限り御家族の方にも寄り添って隣で見ていただいて、一緒に治療したいと思います。『もう年なので押さえてまで治療を希望されない』のであればできる範疇での治療になりますし、入院治療が困難であれば本来は厳しいですが外来の範囲で自然に見ていくというのも妥当とは思います。が、当院の規則で面会は制限させてもらっているため身体抑制できないのであれば状態が悪くても御帰宅いただかなければなりません。

 

んー、とても冷たい。

全体的に倫理的にも微妙な気がしますが、これ以上の落としどころは自分の中では見つかっていません

 

コロナ禍でのいい診療の仕方があれば教えてもらいたいくらいですが、医療者も患者も家族も非常に窮屈な思いをしているのが現状です。

 

 

 

 

 

 

 

コロナ禍での終末期診療でできること

 

オンライン診療のところでも書きましたが、やはり最期は往診がいいのではないかと思っています。

家であれば最期まで家族が寄り添ってみることができますし、病院という環境変化で精神面が乱れることもありません

 

また、死亡時などには遺族へのこれまで以上の精神ケアが必要と考えます。

 

今後は病院と自宅をオンラインでつなぐような、医療タブレットのサブスクリクションなどが流行るのではないかとひそかに踏んでおります。

 

 

 

 

 

 

 

 

診療における心情を率直に書いてみました。

 

トーテムポールです。

 

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