循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

「コロナの検査結果出てから緊急手術をします」と言われたら

こんにちは、うしです。

 

特にこれといった話題がないときは、ニュースの記事をみて、自分なりに発信しようと思います。

 

と言っても、特に医療系は最近はほとんどコロナのニュースばかりですね。

今日はこれにしました。 

 

 

 

 

PCR 検査 結果 待たずに 患者手術、 途中で 陽性判明…  執刀 医 ら 自宅 待機に  神戸 市立 医療 センター

 

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202007/0013561256.shtml

 

 

 

 

 

ニュースには詳しい情報は書いていませんが、とりあえず、手術前に新型コロナウイルスのPCR検査を施行し、結果は出ていなかったが患者の健康状態に問題がなかったため、予定通り入院翌日手術をし、術中にPCR陽性が判明し、執刀医含め自宅待機になったという内容です。

とりあえず、待機的な入院での手術のようですね。

 

これに対して病院は「検査結果を確認しないまま手術を始めたのは問題であり、今後はルールを徹底したい」と言っているようです。

 

 

 

 

 

 

これにはいくつか論点があると思います。

 

1つは、ちょいちょい記事にしていますが、

検査は結果をみて方針が変わるから行うべきであり、

術前にPCR検査を施行するということは、PCR陰性→手術施行、PCR陽性→転院という方針が変わりうる検査施行しているのであって、

検査結果を待たないのであればそもそも検査をする意味がありません。

 

ちなみに、前に感度の話をした通り、PCR陰性だからと言ってコロナを除外できるわけではありません。本当にそれらしいかどうかは医者として、総合的に判断するしかありません。

なので、みんなで少しでも蔓延を止めるために、一番妥当なルールを作っていく必要があるのです。

このルールには絶対的な答えはなく、またコロナに関していうと事前確率(流行具合)によって大きく変わります。

 

例えば

①体調が良い(ex 体温37.5度以下+上気道症状なし)ならPCR検査をしないで手術など行う。

②37.5度以上 or 上気道症状ありならPCR検査を施行して、陰性を確認してから手術を行う。

 

などです。

 

さらに、事前確率が高い(コロナ流行)なら

①体調が良くてもPCR検査を行い、陰性1回確認してから手術を行う

②37.5度以上 or 上気道症状ありならPCR検査を2回行い、陰性確認+2-3日経過をみてから手術を行う

 

さらにさらに、事前確率がとても高い(コロナ大流行)なら

①体調がよくてもPCR検査を2回行い、陰性2回確認してから手術を行う

②37.5度以上 or 上気道症状ありならそもそも自宅待機で手術は行わない。

③もはや全例コロナに感染しているに準じてフル装備で手術を行う

 

など、状況によってこんな具合に挙げられます。

 

ちなみに上の内容は今テキトーに考えました(笑)

 

 

大事なことは、

流行によって変動し、かつ答えもなく責任問題になりうるから

施設で最大限慎重に検討し、

足並みそろえた規則で動くべき

ということです。

 

 

 

そういう意味では、病院発表の、「問題」ということも、今後はルールを徹底したいということも、まあ当たり前と言えば当たり前というようにもとれます。

 

 

 

 

 

2つ目は、

 

これが何の手術だったかわかりませんし、入院して翌日に手術をしているようなので、たぶん定期の予約手術なんでないかと思います。例えば胆嚢摘出みたいな、急がないような手術。

 

そうであれば、1日くらい、せめて半日PCR検査結果出るのは待てるんでないか~と思ってしまいますが。

 

循環器内科も定期検査や治療はあります。これは、施設の基準が「入院日にPCR検査をして、翌日陰性を確認してから行う」という風になるなら、それでいいです。

 

問題なのは緊急手術です。

 

外科も当然ありますし、循環器内科は、それこそ心停止(やそれに近い状態)であれば1分待てない時もあります。

 

 

 

家族が病院に運ばれて、PCR検査を施行して、待っている間に死んでしまったらどう思いますか?

 

ありえないですよね。

 

 

 

もはや最近の、特に東京は感染者数がすさまじいのでどういう診療をしているのか北海道とも差がありそうですが、

 

でも現実に、それに近い医療崩壊(コロナのせいでコロナ以外の不幸が生じている)は現状たくさんあるのではないかと思います。

 

あまり大々的に報道できないでしょうが。

 

 

 

 

 

少しでも患者(不幸)と医療者(の感染)から守るにはどうしたらいいか。

 

とりあえず、

 

全員コロナにかかっているものと割り切ってフル装備で進めてしまう

 

それが一番手っ取り早いと思います。

 

 

 

 

でもこれもすごくストレスなのです。

 

またマスクも息苦しいし、装着もめんどいし暑いし、デメリットだらけなのですが、とにかく

 

全ての診療が遅れるんです

 

フル装備になる時間の他に、移動のための通路確保や部屋の汚染予防、換気などなど

 

ざっくり、2倍くらい遅れるようなイメージです。

 

心筋梗塞の患者の場合、1分争って動いているため、この遅れがすごくストレスでもどかしいです。

 

というか…コロナ全然疑わないでしょ???

 

と言っても、最初に書いたように病院のルールにすると守らないといけません

 

もう待てない!と思って、このルールを逸脱して、叱られるような社会では、何も報われないような気がします。

 

 

 

 

北海道の当院の循環器科では、だいたい3段階くらいにモード分けして、簡略かつスピーディーになるように診療訓練しています。

 

確かにwith コロナですね。

 

 

 

 

 

でも、半年前とは全然診療の流れ、考え方は変わってしまったと感じます。

 

少なくても、循環器に限らず、コロナが流行するにつれて

 

たとえコロナの死亡率が低いとしても

 

これまでの標準診療を世の中が維持していくのは難しい状況です。

 

簡単に言うと、診療のレベルが下がるということです。

 

 

 

 

多くの病院が、コロナのため患者家族の面会を禁じている状況です。

 

看取りが近い患者でも同様のようです。

 

たいていは「コロナのため、面会はできない状況です」とアナウンスがあったり、入口に紙が貼ってあるのがほとんどです。

 

 

 

 

なんなら、北海道でも、その病院でしか治せないものだとしても

発熱やCTで肺に影があったり、PCR検査を行っていないと診療を遠慮される例も散在しています。

 

 

コロナのため、標準治療ができない状況です

 

 

 

 

 

というポイントに差し掛かっていると思います。

 

 

 

 

 

首をかいてもらって満足気なうちのオカメインコ。

 

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