循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

病院は給料を実力制にすべきか?

こんにちは、うしです。

 

 

 

 

今回は、タイトルの通り、病院のお金について、特に能力主義や出来高ボーナスの是非について、現状と踏まえて書いていきたいと思います。

医療関係の他にもお金に興味のある方は是非読んでいただけたら幸いです。

 

そのディスカッションをする前に、最低限の病院の現状や内容を書いていきます。

 

基本的には、給料の差が生じるくらいスタッフがいる大きい病院を想定して話します。

 

 

 

 

 

 

当直とは

 

当直とは、医師が病院に泊まって患者さんの主に急変対応などをオンコールで受けることを言います。

病院によって様々で、一晩平均で3-5万円程度でしょうか。程度研修医などが研修兼ねている場合は5000円程度のこともありますし、大学病院のコネや実力(専門医)、年末年始の時期などによっては一晩10-20万円のものもあるらしいです。

少しイヤな言い方をすると、他職種の夜勤とは違って、基本は朝から夕方まで働いたあとの当直であり、翌日も通常通り仕事があります(お昼くらいに上がれることもあると思いますが)。通常の夜勤は翌日は明けで業務はないはずです。

そのため、あくまで急患がいたら呼ばれるけど基本は寝ている、のが当直です。

(それにしては給料いいではないかと思われるかもしれませんが突然生死の境目となるコールを一人で対応しなければならないこともあります)

内科当直の他に、病棟当直(自分の病棟だけ呼ばれる)や外科当直、整形外科(ケガ災害当番時)当直、消化器2次救急当直など様々です。今回は一番わかりやすい内科当直を中心に話していきます。

 

 

 

 

 

救急車は誰が診療するのか

 

救急車に限らず、ウォークインという歩いて救急外来にくる人もいます。

これは病院によって、また時間によってかなり差がありますが、とりあえず日中は救急外来担当の医師が常時いることが多いです。

夜間は、大学病院などは救急専門医がスタンバイしていると思いますが、通常の病院は内科当直医が対応することが多いと思います。先ほど通り寝ているところに患者さんが来たら起きて診察する、ような感じです。

 

 

 

 

 

 

病院の時間外診療の現状

 

患者さんの場合、救急車で時間外にきたりすると時間外診療などの割り増し料金になります。臨時入院となった場合、臨時入院するのに妥当なくらい重症だと、重症加算などが病院に入ることがあります。

また自分のいる循環器内科の場合、急性心筋梗塞の患者さんをすぐにカテーテル室に運ぶのですが、治療が終わる(つまった血管を開通させる)のに来院後から90分以内だと10万円病院に入ります。これ1分過ぎてもダメらしく、1-2分は心臓でいうとあまり予後的に変わらないと思うのですが、来院後から90分は何故かかなり意識します(笑)

 

 

 

 

 

病院の日常診療の経営

 

医療者は病院に入る診療報酬から主に給料が支払われます。その診療報酬は、もちろん診療して入るのですが、お客さんではないので「病気ありませんか~?」なんて売り込んだりはしません(笑)

診療の流れとしては、クリニックなどから紹介か、救急外来か救急搬送で外来を経由したり直接入院となったりします。入院で検査や治療を行ったり、場合によっては手術や循環器でいうとカテーテルやペースメーカーなどを行います。その後の定期的な検査診療で外来通院開始となり、安定したらかかりつけのクリニックなどにお戻しやクリニック新規紹介などします。

上記の流れで外来診療や入院加療、また手術などの技術料で主に経営が成り立っています。

 

 

 

 

 

 

時間外診療の現実は?

 

現実はつらいです。

何がつらいかというと、頑張って診療しても自分にはデメリットしかないからです。

まずは時間外診療について、病院の方針として救急外来を開けており、歩いてきた患者さんは診療することになるとは思います。

問題なのは救急車です。救急車は救急要請し救急隊から病院に受け入れの可否の電話をするのですが、(やる気のない病院は守衛レベルで断っていますが(笑))、通常は医師が受け入れの最終判断をします。

変な話、めんどくさそうな患者(重症に限らず人柄的に問題ありそうだったり最近だと発熱患者など)の場合、ベッドがガラガラでも「ベッド満床ですので受け入れできません」と言ってさえしまえば診なくてすみます(通常はしませんが)。

これを受けた場合、救急車でくる患者対応はたいてい1-2時間はかかるため(長いと3-4時間)、真夜中に来られたら一人であってもほぼ寝られないこともあります。病院には時間外診療等でコストが入っても、自分には基本金銭は入りません。応需してその患者の診療に手が負えなかった場合は受け入れた医師の責任になります。なんなら寝不足になって翌日の手術などに影響が出てもその医師の責任です。

だってそれわかって当直しているんでしょと言われると思いますが、先ほど書いた通り、当直はあくまでもしものときのオンコールであって夜勤ではありません(夜勤の場合は連続勤務超過で労働基準法違反です(笑))。

 

少し極端かもしれませんが、そんな感じの現状なので、例えば救急ベッドがほぼ満床や、少し自分や当院のキャパシティを超えた患者の受け入れ要請はネガティブにならざるを得ないです。

 

 

 

 

 

日常診療の現状は?

 

今度クリニックと大病院の関係についてまた記事を書こうと思っていますが、基本中規模以上の病院はクリニックから手紙をもらって予約診療し、安定したらクリニックにお戻しするのがお約束です。

何故かというと、大きい病院には専門科の手術や特殊な検査などの高度な医療機関を外来・入院で行う使命があり、クリニックには大病院と提携して日常診療や処方を継続したり、科に限らず広く浅くその患者さんの健康を維持する使命があるからです。

これを守らないと、クリニックとしてはせっかく患者さんを大病院に紹介したのに患者さんが帰ってこない(患者さんが減っていく)ということになったり、大病院はクリニックに戻さないと外来が埋まってしまう(新しい患者さんを受け入れ高度で高額な診療ができない)ということになるからです。

また患者さんもそこを守らないと、一見大病院だけで見てもらえるのは良く見えるかもしれませんが、「専門科の内容しかわかりません。時間外は診れません」となりうるため、クリニックと大病院の役割は守るべきであります。

 

しかし、外来をやる側の立場の場合、クリニックに紹介して新しい患者を受け、またクリニックに戻してを繰り返すのは結構大変です。初対面の人の病状を探るのはよくわかっている人よりも難しいですし、毎回手紙書いたり検査入院プランを立てたりしなくてはいけません。患者さんからも「診てくれないのか」と不満を言われることもあります。

一方で、そこをさぼって、病状安定しているのに永遠と大病院なのに自分の外来で見続けるとどうなるでしょうか?よくわかっている患者さん相手なので楽ですし、安定しているため診療時間も短く済みます。他院への手紙も不要ですし、患者さんからも「よく診てくれている」と感謝されるでしょう。

ただし上記の通り、病院の役割としては正しくなく、結果病院経営としても新しい入院患者が発生しないためよろしくありません。たぶん一般の会社などで売り上げ成績など出されたら偉い人に呼び出されるでしょう(笑)

 

病院は儲け主義ではなく、かつ医師に対しては比較的フリーなところもあるため、このような監視の制度はほぼないと思われます。つまり、頑張って診療を回せば回すほど患者さんからは嫌われ忙しくなり何も自分にはメリットがないのが現状だと思っています。

 

 

 

 

 

上記を踏まえた今後の課題と提案

 

まず救急車について、どうやら救急車受け入れ1台につき5000-10000円もらえる病院もあるようで、臨時手術やカテーテルを行った場合数万円くらいの報酬がもらえる病院も多いようです。うちはないですが。

お金が全てではないですが、やはりお金は大事です(笑)額面が少なくても、頑張っても損しかしないよりはよほどいいかと思います。

 

外来診療について、他院のことはあまり知りませんがこちらはあまり病院間の差がないかと思われます。

 

提案としては、金銭というよりも、誰がどのくらい救急車受け入れをしているのか、新規外来患者を診療しているのかをもう少し評価するシステムがあってもいいのではと考えています。なんならメールでトップ5が表彰されるだけでも少しやる気でます(笑)

 

現在の診療は、特に救急車などは医師の正義感と経験(患者診療は個人の経験と勉強になります)のみに委ねられているのが現状です。

これは看護師さんや他の医療スタッフもほぼ同様と思います(診療するかの決定は医師がしても、それに連なって仕事が増えるだけです)。

 

正義感も大事なのですが、それだけだと今回のコロナ騒動のようなときに傍女子医大のボーナスカットのように「こんなに頑張っているのに、辞めてやる!」と爆発しかねないと思っています。

 

 

 

 

お金はほしいですが、もっと金をくれというブログではありません(笑)

 

 

 

現状について率直に書いてみました。

 

 

 

ほほうーって思ってもらえたら幸いです。

 

今日は凛々しいです。真剣に考えてる顔ですね。

 

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