循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

コロナで循環器内科医が困ってること

こんにちは、うしです。

 

 

 

全国的に新型コロナウイルス感染症の数が増えてきております。

 

これに対する是非や各医療機関でも困っていること、意見等々はたくさんあると思いますが、今回は、循環器内科診療において困っていること、変わったことを書いて行きたいと思います。

 

 

 

 

緊急カテーテルの敷居

 とにかくこれかなと思いました。

わかりやすい例でいうと、急性心筋梗塞の場合、致死率10-20%とも言われており、疑ったら緊急でカテーテル室でカテーテル検査(手や足にカテーテルという管を挿入し、心臓の血管を写したりすること)を行います。そしてつまった血管に対してカテーテル治療を行ったりします。

本来は来院から治療がある程度終わるまで90分以内でという目標もあるくらいですが、これが今非常にハードルが上がっている状態です。

1つはろくに状況も確認できないため(発熱の有無などもきちんと確認できない)、コロナかどうかの評価が難しいということです。またカテーテル中に心停止呼吸不全などの急変が起きることも多く、その際にいわゆるエアロゾルなどが舞うリスクがあるため、少しでも不安定であれば事前に気管挿管を検討するような風潮(お達し)となっています。もちろん心筋梗塞は重篤な病気ですが、経過が良ければ1-2週間で退院できる病気でもあり、また緊急での気管挿管自体のリスクやさらなる時間の消費にもなるため、いずれにしても急性心筋梗塞の診療を複雑化していると言えます。

学会からは、(血栓を溶かす薬)で様子見も検討とさえあるくらいなので、コロナは急性心筋梗塞の迅速な対応を難しくしていると言えると思います。

 

自分としては、感覚的には10-30分は診療を遅くさせていると思っています。それが命に関わることもあります。

 

 

 

 

 

 

待機的なカテーテルの風評被害

 緊急でなくてもカテーテル後の経過確認や、他に細い血管があり経過を追っている方、また胸痛などあり狭心症を疑い今後初回のカテーテル検査を予定している方など、緊急でないカテーテル検査を毎日やっています。

 こちらに関して、「病院はコロナが怖いから」と、この時期の検査をためらわれるケースが増えています。

最近は冠動脈CTという外来でできるCTでもある程度評価できるようになりましたし、緊急性はないことが多いのですが、必要な診療がコロナのために敬遠されているのは間違いないと思います。

 入院検査でなくても「病院はコロナが怖いから」という理由で受診をためらわれる方も増えています。「症状がなければ良い」という方はまだいいのですが、「症状が出にくいから定期的な検査をしている」方の場合、コロナ以上のリスクを負ってしまっていることも少なくありません。

 

またカテーテル検査には急変がつきものであり、検査結果の内容も重要なものになります。少し前は基本的に家族と一緒に検査説明し、当日は院内に待機してもらっていましたが、最近は病院としての外部からの出入り制限のため、本人にしか説明できないことが多々あります。

変な話、合併症等で重症になった場合は本人の意識もなくなることもあるため、事前に家族との共有は非常に大事であり、隠れたコロナの弊害だと思っています。

 

 

 

 

 

コロナ感染症(ARDS)という新しい鑑別

 コロナはあまりよくわかりませんが、肺炎になる際は比較的急な経過を辿るとのことで、また重症化した際にはARDSという重症呼吸促拍症候群になると聞いています。

つまりはコロナの肺炎は発症も重症化も比較的早いということです。これが心不全の発作のパターンとよく似ていると感じています。

通常の肺炎の場合、肺に炎症が及ぶので0.5-3日くらいの経過で進むのが特徴なので、突然の呼吸苦というと僕たちは肺炎ではなく心不全を疑っていました。そのため、急な呼吸苦という触れ込みで搬送された場合、コロナと心不全の両方の鑑別が上がります。また合併例も考えられるため、どちらかと決めればいいわけでもありません。

 

実際には感染対策の懸念からコロナの対応(主に隔離など)が優先されることが多く、可能な範疇でそれ以外の疾患の評価や治療となります。

心不全は非常に奥が深く、適切な治療が難しい病気でもあります。

現実的には、コロナのせいで心不全の診断や適切な診療が遅くなっていることは否めないと思います。

 

 

 

 

 

NPPVへのハードルの高さ

 心不全発作の際に循環器科はよくNPPV(非侵襲的陽圧換気)というマスク型の人工呼吸器を使用します。これが、酸素の値以上に水がたまった肺血管を陽圧で拡張させてくれるため、著効します。 

普通の肺炎でも効果はありますが、心不全へのNPPVの反応がとてもいいことから、NPPVで改善効果が高ければ心不全らしいというくらいだと思っています。

このNPPVについてですが、陽圧をかけ呼気を巻き散らすため、先ほどの心筋梗塞で触れた通り、エアロゾル発生させるとして、現在非常に警戒されています。

基本的にはコロナを否定できなければ、使用は禁忌と考えられています。

その場合実際どうしているかというと、やはり気管挿管になってしまいます。気管挿管は上記の通り導入も維持治療も侵襲的で身体の負担が大きく、本来であれば避けたい治療です。

自分たちは、明らかなに心不全の際はNPPV(+隔離+周囲の人はN95マスク)として、心不全が明らかとは言えない場合は気管挿管を選択することが多いです。

 

NPPVは心不全診療に欠かせないものであったため、非常に痛手と思っています。

 

 

 

 

 

 

消えたメーカーさんたち

 コロナの関係で家族たちの他にメーカーさんたちも出入り制限となっています。

別に困っていません…(笑)

 

当院はプロフェッショナリズム?の関係で残念ながらメーカーさんや薬屋さんからお弁当やボールペンをもらうことができません

カテーテル治療をするときも、後ろにメーカーさんがいるとなんだかそのメーカーのものを使ってほしそうな目で見てくるので、なんだかでした(笑)

 

個人的には、全く困っていません(笑)

 

こっちみんなですね(笑)

 

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