循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

医者が思う摂取してもいいサプリメントとは

こんにちは、うしです。

 

 

今回は周囲で話題になったサプリメントについて、あくまで個人的な意見を書いていきます。

あまり積極的にサプリメント飲みましょうにはならないと思いますが、あくまで個人的な意見なので参考程度に(飲んではいけないと言っているわけではありません)お願いします。

 

 

 

 

 

サプリメントの種類

 

サプリメントにはいろいろな種類がありますが、ダイエット・美肌などの美容系と、ビタミンなどの健康維持系に分けられると思います。

 

ダイエット美肌系の場合2-3か月を1つの目安に、効果の有無によって継続するのが一般的と思います。

 

健康維持の場合は通常は無期限で(なんとなく体調良いと感じるかもしれませんが)、これと決めたら飲み続けるのが多いと思います。

 

 

 

 

 

 

 

薬とサプリメントの違い

 

薬とサプリメントの違いはたくさんあると思いますが、一番は、医学的に効果が立証されているかだと思います。

 

薬が認可されるためには、たいていは臨床試験という研究を行い結果を出す必要があります。

できれば●●を飲むと飲まないのに比べて死亡率が下がった、と言えるのが一番いいですが、薬1つで寿命を延ばすのは容易ではないため、●●を飲むと血圧が▲▲下がった、と具体的な数値の改善で立証を示すことが多い気がします。

 

サプリメントがどのように研究生産されているか詳しくは知りませんが、薬に比べると基本的には科学的根拠は乏しいです。

 

よくテレビで、「●●を飲んだら✗✗kg痩せた!」などありますが、もし薬として同様の効果を立証するためには多くは二重盲検法という研究様式をとります。

どういうことかと言うと、研究デザインとして、A群とB群に均等に分け、だれにもわからないように(飲む人も研究者も両方(=2重で))グループ分けをして、片方に薬を、片方に偽薬(何も効果なし)を与えます。これで薬の方が有意に効果あり(例えば体重減少)あると効果が期待できると科学的に言いやすくなります。

 

なぜかというと、

ダイエットサプリメントを例に出すと、例えばこれを飲もうとした場合はおそらく運動もいつもよりすると思います。また食事も気にすると思います。少なくても飲まない人(ダイエットやる気ない人)に比べたら努力すると思います。これを交絡因子などと言います。これを考慮して均等にグループ分けしないと、ダイエットサプリメントを飲む(ような生活環境改善にやる気ある)人は体重が減りやすいというサプリメント関係ないじゃん!という結果になりかねないからです。

また、ダイエットに効きます!というサプリメントを飲んでいるだけで本当に体重が減るようです(例えば食事も無意識に減らしたり)。この効いた気がするというのはプラセボ効果とも言われます。また研究者も効果を立証したいため微妙な研究データをやや有意な方に調整ができてしまいます。

 

このようなバイアスを極力排除したのが先ほどに二重盲検法になります。

 

サプリメントがどうできるか知りませんが、CMとか見ている限りでもそんな厳密な研究はしていないと思うため、サプリメントは薬と比べると科学的に効果は立証しがたいと思います。

 

また薬もサプリメントも、生産者の一番の目的は正直「売れること」です。ただし薬の場合は医者-薬剤師を経由して科学的に妥当かの判断をして患者さんへのメリットがあると思って(普通は)処方しますが、サプリメントの場合は生産者も販売者も全て目的は売れることであり、変な話飲む人が痩せようがあまり関係ないです。

 

(もちろんサプリメントも効果があり飲み続けてくれることを期待して販売するため効いてほしいと願って研究されていると思いますが)

 

 

 

 

 

サプリメント使用時の注意点

 

とは言ってもサプリメント自体には逆に副作用も少ないため、薬のように飲んではいけないということは少なく、上記の通り効果がそこまであるかは別として、害もあまりない気がします。

 

 具体的なものは最後に挙げるとして、サプリメント全体として言えるのは以下2点かと思います。

 

薬の副作用

出やすさはものによりますが、いずれも肝臓で代謝されるため肝障害などのおそれはあります。頻度は多くないですが、肝障害の原因としては薬剤性(サプリメント含む)は多いです。

また間質性肺炎という、肺の間質(隙間の部分)がかたくなる難病の肺炎になる報告もあるものもあります。

少なくても健康になろうと思って肝障害や肺炎になるのは悲しいです。また病院で処方しているわけではないので、特に肝障害は自覚症状がなく気が付きにくいため注意が必要です。

 

サプリメントへの依存・過量摂取

サプリメントはあくまでその栄養素(もしくは美容)への補助であり、それを飲んだら効果が出るというものは根本的にありません。

例えば「サプリメント飲んでいるから大丈夫」ときちんと栄養のあるものを食べずにコンビニ弁当やカップ麺ばかり食べては本末転倒になります。

また量も問題です。中には蓄積するものもあるため、適量を超えて飲むと中毒になることもあります。

 

 

 

 

 

 

これはありだと思うサプリメント

 

では、医者的にこれはありだなと思うものはあるか考えてみました。

 

鉄剤

特に女性は月経等で鉄欠乏状態になることが多く、実際に元気な若い女性でも鉄欠乏性貧血になっている方をしばしば見かけ、鉄剤を処方することがあります(ただし他の消化管出血などの除外のための検査もしますが)。

いずれにしても原因が正常の生理反応での鉄不足であれば病院でも鉄剤を処方するくらいなので、健診などで軽い貧血の指摘をされたことがあり生理の量も多いなどあるようであれば、鉄剤は非常に理にかなっていると思います。

もちろん、閉経したら終了して構いませんが、何か持病を持った際には貧血・鉄剤も一緒に病院からもらうこともありだとは思います(検査をすると実際は鉄剤飲むほどではないとわかることも多いと思います)。

 

葉酸(妊娠初期)

葉酸は脊髄の栄養素であり、通常の生活では不足しがちなため、妊娠期には葉酸摂取が推奨されています。葉酸を飲まないと有意に二分脊椎(という病気)が増える(もしくは葉酸のサプリメントを飲むと有意に二分脊椎が減る)という科学的根拠は聞いたことはありませんが、こちらも過量摂取しなければ害は少ないため、お子さんのためにも良いのではないかと考えています。

広告のホームぺージだと授乳期や男性にも推奨していましたが、これは販売目的な気がします。あくまで女性がお腹の中の赤ちゃんの脊髄を形成する最初の1-2か月が重要なのだと思っています。

赤ちゃんの場合、例えば「あなたは葉酸をあまりとらないでください(研究のために)」という非倫理的な研究はされがたいですし、また葉酸をあまりとらずにもしも障害のある子が生まれてきた場合(障害があっても生まれてきてくれることは幸せなことですが)、「葉酸をとっていればもしかしたら…」という後悔の念が出るかもしれません。

また葉酸の場合は期間限定のため総合的にも妥当だと思っています。

 

ビタミンB,C製剤

こちらはそこまで推奨はしていませんが、水様性ビタミンなため過量に摂取しても尿として排泄されるだけです。なので決して害にはならないため、まあ悪くはないんでないか、とは思います。

またビタミンBなどは日常診療でもたまに不足して処方することがあります。

ただしこれらは辞め時が難しく、体調等にも実感わきにくいです。またビタミンBを処方することがあるといってもそのような方はたいてい何らかの基礎疾患や改善すべき生活背景があることがほとんどです。

なのでサプリメントとしてビタミン剤を最初から積極的にお勧めすることはあまりありません

 

 

 

 

 

 

 

 

これは少し注意が必要なサプリメント

 

逆に要注意なものを具体的な商品名は避けて挙げてみます。

 

肝臓のサプリメント

肝臓の数値がよくなるというものが売られていることがあります。薬としては、ウルソという胆汁の排泄促進する薬を肝障害に広く使用することがありますが、そもそも薬やサプリメントの使用自体が肝臓に負担をかけます。

また肝臓の数値が悪いのであればその原因が問題です。多くはアルコールや肥満に伴う脂肪肝だと思いますが、中にはB型肝炎などのウイルスや自己免疫性疾患などもあります。

個人的には肝臓の数値に対してサプリメントを使用するのはデメリットしか感じません

 

海外のダイエットサプリメント

特に海外のものは何が入っているかわからないので注意が必要です。

個人的には、甲状腺のホルモン剤などの代謝を無理やりよくするものが入っているのではないかと憶測立てていますが、もしそうであれば下手したら病気を自ら作りかねません。そのような理由でも出どころがはっきりしないものはやめましょう。

国内のものでも、実際に例えば自由診療をやっているクリニックのラインナップをみると、ダイエット薬と書いてあるものの一部はただの血糖降下剤(おじいちゃんが糖尿病で飲む薬)で、副作用に低血糖と書いてあるものもありました。危ないと思っています。

ダイエット関係は個人的には、効果あるものは危険で、安全なものは効果はないと思っています。

 

ヒアルロン酸、コラーゲン、GABA

これは摂取したら悪いというわけではありませんが、関節痛(変形性関節症)などでコラーゲンが(膝に)不足している、という理由でサプリメントがよく売られています。

以下の日本整形外科学会のホームページでも言及していますが、口から飲んでも胃-腸で普通のアミノ酸に分解されてしまうため科学的には効果はないと考えられます。

サプリメントの効果について|公益社団法人 日本整形外科学会

 ただし詳細不明ですが、ホームページにもあるように、「効いたかも」というデータもあるようで、またサプリメントの売り上げを根拠もなく落とすわけにはいかないため(効かないという二重盲検を用いた科学的根拠もないため)、積極的な推奨はしない、と言う立ち位置になっています。

またGABAも自分が大学2年生の段階で神経解剖学で「GABAは脳脊髄関門を突破しないから脳の栄養素として効くことはありえない」と言っていました。

こちらも、効かないと立証しているわけではないですが、自分としては特にGABA入りの食品の場合はそれに付属する糖分のおかげでリラックスしているように錯覚しているだけだと思っています。 

 

 

 

 

 

 

サプリメントの上手な使い方

 

あとのものは可もなく不可もなくと思っています。

 

いずれにしても大事なことは、①規則正しい食事や運動をすること、②サプリメントを使用するときは何も目的に何を補充したくてどのくらいの期間使用するかイメージすることだと思っています。

 

自分は栄養学などは得意ではなく、あくまで普段処方する薬と比べての意見を書かせてもらいました。

また新しい発見などあったら適宜更新したいと思っています。

 

 

 

 

 

少しでも何かに参考になれば幸いです。

 

 

 

今日はデレデレです。

 

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