循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

PCR検査の役割が変わった!感度特異度の話~

皆さんこんにちは、うしです。

 

 今日は最近流行り?の新型コロナウイルスのPCR検査について、明らかに検査の役割が変わった(個人的にはごり押しの状態)と感じたので、その内容理由と、個人的にどうしていけば良い検査になるかを書こうと思います。

 

最近は東京などで自由診療で検査を行う方(1回2-3万円と報道がありましたね)もいるようで、否定はしませんが参考になれば幸いです。

 

 

 

まずその前に検査を行う理由ってなんだと思いますか?

 

 

 

 

大前提として、検査は医学的な診療プロセスのため、くじ引きや占いではありません。

 

個人的に一言でいうと、

 

陽性の場合(または陰性の場合)で方針が変わるため(変わるべき)

 

それが必要な検査を行う理由と思います。

 

陰性で安心がほしい、や、陽性の人をしっかり捕まえるなどあると思います。

 

ちなみに公衆衛生的には感度と特異度といって、すごくざっくりいうと感度が見逃さないで見つける制度の高さ、特異度は間違いなくそれだと確定診断する、と考えてもいいかなと思います。

 

新型コロナウイルスの感度が70%(低い)くらい、特異度が99%(高い)と聞いています。

どういうことかというと、

 

・コロナらしい人が陽性の場合、特異度が高いため間違いなくコロナ

・コロナらしくない人が陽性の場合、特異度が高いためたぶんコロナ(とりあえずコロナ対応でよい)

・コロナらしい人が陰性の場合、感度が低く見逃す可能性が高いため判断つかない

・コロナらしくない人が陰性の場合、感度が低く見逃す可能性が高いため判断つかないがたぶんコロナではない

 

上記のようになります。

 

そもそもPCR検査のように特異度が高い検査は、事前確率が高く診断をつけにいくときに使うものであって、例えば「●●の人全員に~」のように事前確率が低いときに行うべき検査ではありません。

 

(自分は検査は比較的好きというか、参考にすべきと思うので、この記事を踏まえて解釈を間違えないのであれば施行する分には否定しません)

 

 

ではなぜ事前確率の低い集団的検査(スクリーニング)で感度のPCR検査を行うのでしょうか?

 

 

それは、これ以上感度のいい新型コロナウイルスの検査がないからです。

 

抗原検査はさらに感度が低いと聞いています。

 

つまりどういうことかというと、保健所や国が施行しているPCR検査数の拡大(そもそも海外を比較して国内でもっとPCR検査をやれやれ風潮が強いですが)に向けていますが、

 

とりあえず感度は低いけど検査の数を増やせば

公衆衛生的に

 (社会全体として)

 (たくさん偽陰性(見逃さない制度が低いので見逃して陽性を間違って陰性としてしまう)がでたとしても

感染者数を減らせるでしょう

 

という数でごり押しの状態と言えると思います。

 

 

これが悪いというわけではなく、検査の範疇としてはこれしかないと思いますが、受ける側は陰性のとき、ぬか喜びしないように(あなた一人が間違って本当は陽性なのに陰性と言っても社会全体の混沌の中では誤差)、正しく解釈してもらえればいいかと思います。

 

 

ではその中で、どうしたらPCR検査の精度が上がるのか、受ける側も正しい解釈ができるのか、を個人的に考えてみたいと思います。

 

ちなみに、当院ではPCRの解釈としては、「陰性であれば、リスクが下がる」として、必要あれば複数回PCR検査を行っています。

 

 

 

 

ところで、検査において感度特異度、~%というのは、なぜ生じるか、いまだに疑問です。

というのは公衆衛生の教科書や、医学書にも、~ということはある、や、感度~%とはあってもなぜその数字なのかに言及した記載はあまり見たことがありません。

 

まず、コロナウイルスなどのPCR検査に焦点を当てて考えてみます。

 

 

 

PCR検査は、とりあえず、遺伝子を増幅させてそのウイルスがいるかを検査します。

 

陽性の場合、つまり、鼻咽頭から検査した液体にウイルスがいたら、それは間違いなくウイルスはいるでしょう(=特異度99%と高い)。

もしこのウイルスが発症せず定着(そこにいるだけで体内で感染はおきていない)など起こすようなウイルスであれば特異度はもっと下がると思いますが、このウイルスはそういうことは(今のところ)ないらしい(感染してしばらく経つとウイルスはいても感染力は失うのみ)ので、ウイルスがいるということは最近感染したということでしょう。

特異度99%の1%の誤診は、検査を提出する際のヒューマンエラーや、例えばウイルスが定着しているだけなどの非常に稀なイレギュラーのまとめのように考えればよく、特異度はほぼ100%でいいと思います。

 

問題なのは感度です。

 

ちなみにこの新型コロナウイルスの潜伏期間(感染して症状発症までの潜在期間)は2-14日?程度だったと思います。

感染力は発症1-2日前が高く、数日経つとウイルスはいても他人にうつすような感染力は低下するとのことです。

 

なぜ70%なのかというと、まずはPCR検査がその一瞬の時間に鼻などにウイルスがいるかしか見ていないため、発症する数日前よりもっと前の場合はまだウイルスがPCR検査で陽性となるほど鼻などに繁殖してなく、陰性になると思われます。

また綿棒でこする検査(唾液もですが)のその場所にウイルスが十分にいるかというと、なかなか制度を上げるのは難しいと思います。綿棒にくっつく程度なので。

またウイルスは全身感染症なので、つまりは鼻にのみウイルスが定着しているかわかりません。全身にウイルスがいる(これは便からうつるという意味ではなく)ということは鼻の有無が全てではないということです。

 

このため、理想的には、PCR検査の感度を上げ、集団感染のスクリーニングで検査を使用するのであれば

 

接触から2-14日までの間

毎日両鼻や奥まで全周性にぬぐうように

毎日

鼻汁や唾液の他に便やありとあらゆる体液から

PCR検査を提出

 

すれば、感度は100%に近く、少なくても90%くらいにはなるかと思います。

 

 

 

 

…無理ですね(笑)

 

ちなみによく「無症状の人〜」って言われますが、個人的にはそれはあくまで検査を先行させすぎたわけで、2週間(後遺症含めれば1ヶ月以降も)全く症状がない人はそんなに多くないのではと思っています。

(PCR検査陽性で「無症状なのに発症」とテレビなどで報道されたあとに症状が出てくる人もいるということ)

 

そのため、少しでも感度をあげ、実現可能な臨床(または集団チェック)にするにはどうしたらいいかというと。

 

可能性ある接触時期を特定して

最初1回に加え、発病しやすい数日後に再度PCR検査を行い

可能であれば発病しうる最後の期間(接触から14日前後)に再度PCR検査を行い

その3回目の結果をもって、陰性(隔離解除)

 

にすべきかと思います。

 

3回PCR検査や、各々14日隔離は現実的に難しいと思いますが、少なくても2回は行った方がいいと思います。これだけ検査を行っているのであれば。

 

少しこの領域に携わりましたが、事前確率が低いこともあり、現状の保健所の指示は1回陰性であればOK、というのを感じました。

 

 

 

ちなみにインフルエンザもだいたい同じです。

 

今ほど検査の精度がトレンドになっていませんでしたが、特に入院して院内感染を起こしうる病態の場合は、自分は繰り返しインフルエンザの抗原検査を行っていました。3回目でようやく陽性という人もいて、院内での感染拡大を防ぐのに、また本人の病態解明のために有効だったと思っています。

 

…この、入院中のインフルエンザ抗原の繰り返した検査は有効だと思っていますが、自分以外はあまりやっているのは見たことなく、とても有効なのではないかと思っています、ひそかに(笑)

 

 

 

話は戻って、

 

じゃあ、我々はどうしたらいいんだ、というと、行政の問題であまりうまい手がなく申し訳ないのですが、記事にさせてもらいました。

 

少しでも参考になれば幸いです。

 

早く、感度の高い検査が出たらいいですね。

 

 

 

 

 

最後に今日のインコのミーティングを載せて終わります。

 

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