循環器内科うし先生のほのぼのブログ

北海道の中規模病院で勤務する循環器内科医のうし先生です。

自分の病状を上手に伝えるコツ

こんにちは、うしです。

 

前回は、受診の目的が多様で医療者と考えがずれることがあるという話をしました。

 

今回は、ただの一般的な問診のことですが、患者目線で、体調が悪いとき、どうしたら上手に医療者に自分の病状を伝えられるかについて書いてみたいと思います。

 

 

ちなみに、このブログの下書きを書いたあとに以下のニュースがあったので、まず貼っておきます。

前提として、参考になると思います。

 

親の 病院に 付き そう とき、 医師の 話の 賢い 聞き 方は?| 700 人 以上 看取った 看護師が アドバイス

https://kaigo.news-postseven.com/83552

 

 

 

 

 

そしたらそしたら、

 

まず、医療において問診とは、病歴(体調悪くなった経過)などわー聞いて診断を詰めていく手法(つまり話を聞くということ)ですが、、、

 

1つ、「腹痛」というテーマで、敢えて受診目的もずれた例を出してみます。かっこはそのときの気持ちです。

 

 

医「どうされました?」

(顔色は悪くないな、大丈夫そうだな)

 

患「今朝からお腹が痛くてこんなに痛くなったことはなくて、お通じもでなくて、こんなことは初めてなの…」

(初めてなくらいひどい便秘で、浣腸でもかけてくれないかしら、下剤とか処方してもらった方がいいのかしら)

 

医「そんなに痛いんですね」

(そんなに重症には見えなかったけど、人生最悪の痛みなのか。しかも初めてのこと、便も出ないなんて重症の可能性がある。腸閉塞の可能性もあるし、膵炎や虫垂炎(盲腸)とそれによる麻痺性イレウス(炎症によって周囲の腸管が動かなくなること)の可能性もある…。詳細な病歴をとって、造影CTの検査が必要だ…。ただし突然痛くなったんであれば大動脈解離とそれに伴う脊髄梗塞の可能性も否定できないし、それなら急ぐ必要がある…)

 

医「痛くなったのは突然痛くなったのですが?」

(突然だったら大動脈解離の可能性が上がるな)

 

患「そうそう、こんなになったことはなくて」

(こんなに便秘になったことはなくて)

 

医「突然なったのですか??急に、突然なったのですか、そうなんですか…」

(質問の意味伝わったかな?突然なの本当に?)

 

患「ええ…」

(今なんて言ったのかしら、とりあえず浣腸とかかけてくれないかしら…)

 

医「それは重症の病気の可能性ありますから大至急精査しましょう」

 

患「???」

 

 

 

 

 

 

 

少しオーバーかと思いますが、日常診療で少なからずこれに近いずれはよくあるなあと思ってます。

(もちろんこれは医者の問診が下手なので、患者さんには責任ないのですが笑)

 

また、途中に書いたみたいに「突然ですか?(まさか突然じゃないですよね?」みたいなことも、特に高齢者の方などで相槌打たれて肯定されてしまうこともあります」

 

 

 

残りの部分で、まず医療者が外来で症状を聞く際にどういうルールで聞いているのかをお伝えし(皆さまが努力する必要はないと思うのですが)、

より正確な病歴をお聞きすることで、一緒によりよい診療ができたら、という願いをこめて、書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

まず、ルーチンできくことがあります。僕の出身大学では以下のゴロで覚えていました(細かいゴロはうろ覚え)。

 

OLQITFA

(OLがとっても求愛、ファンタスティック!)

 

 

 

 

 

文字で書くととても恥ずかしいですね(笑)

この頭文字です。つらいこと(主訴)のことです。

 

O:onset…発症形式

L:location…場所

Q:quality…質

I:intensity…強さ

T:timecourse…時間経過

F:factor…増悪寛解因子

A:association…随伴症状

 

このほかにも続きがいくつかありますが、とりあえず割愛します。あとは前回ブログの通り受診目的が大事です。

 

1つ1つ簡単なら解説していきます。

典型例であればこれだけでおおよそ診断は絞れます。

 

 

O:onset…発症形式

突然とか、数時間前からだんだん、など「いつから」に相当します。急に発症した方が緊急性があることが多く、特に突然発症の場合は緊急事態の可能性があります。

 

L:location…場所

つらい(痛みであれば痛い)場所です。お腹だとしてもお腹などの変かで疑う病気は変わります。

 

Q:quality…質

ずきんずきん痛いや、重苦しいなど、つらさの性状です。

 

I:intensity…強さ

どのくらいつらい(痛い)かです。人生で一番痛い場合は重症の可能性が上がります。

 

T:timecourse…時間経過

そのつらさ(痛み)が時間が経つにつれてどう変わっているのか聞きます。バリエーションは豊富ですが、だんだんら増悪していて、持続的に痛いようであれば重症な疾患を想定します。

 

F:factor…増悪寛解因子

なにをしたら悪化するか、逆に楽になるか聞きます。例えば消化器の病気であれば多くは食後に増悪することが多いです。

 

A:association…随伴症状

そのつらさ(痛み)以外につらいことを聞きます。例えばコロナの味覚障害もこれにあたりますが、特徴的なことが聞ければ診断に寄与します。また冷や汗をかいているなどあれば重症を想定します。

 

 

 

 

ざっくりこんな感じです。

 

皆さんがどういう理由で受診されようが

 

重篤な疾患を見逃して手遅れになってはいけないので、

 

医療者は、まさか重症な疾患ではないよな、と、まず重症疾患の除外を行います

(患者さんが薬だけもらえればよいと思われても命に関わることがあってはいけないので、これは必ず行います)

 

その上で、なにを希望されていようが、まずは疾患(病名つけれるものが全てではないですが)を想起します。

 

 

 

例えば

 

O:onset…発症形式

2ー3日前からだんだん(炎症がおきているようだ)

 

L:location…場所

右のみぞおちが(肝臓や胆嚢がある場所)

 

Q:quality…質

重く刺すように

 

I:intensity…強さ

結構痛く

 

T:timecourse…時間経過

徐々に増悪して(自然に治るものではなく炎症が広がってそう)

 

F:factor…増悪寛解因子

食事をとると増悪する(消化管らしい)

 

A:association…随伴症状

吐き気もある(消化管らしい)

熱もある(炎症がありそうだ)

 

 

 

 

これだと、肝臓はあまり痛みを感じにくく、みぞおちにある消化器が進行性に炎症を起きているようなので、胆嚢炎(もしくは急性膵炎)を疑う病歴になります。

 

 

他にも様々な鑑別疾患があり、こんなに簡単に病歴をとることはお互い難しく、

 

地味に見えますが、問診をとるってすごくテクニックがいります

 

内科医の腕の見せ所になります。

 

 

 

 

 

ざっくりと、こんな風に普段診療しています。

 

ここまで見てくれた方で、特に医療関係者でない方に言えることとして

 

皆さんから上記の経過をスラスラ話してなんて決していいませんので(それはこちらの仕事なので)

 

もし、体調に余裕があるなら、また診察室に呼ばれる前に待ってる時間があるなら、

 

いつから調子悪いのか、どういうときに悪いのか、紙に書いたり、イメージすると、すごく伝えやすいのではないかと思います。

 

 

 

 

 

というのも、普段医療側にたつと、話をきいても全く病歴がとれないとき、

 

なんでこんなに伝わってこないんだろう、と、不謹慎ながらもどかしくなることがありますが、

 

自分が体調悪くなったとき(医学生のときなど)思ったのが

 

体調不良の経過を話すのってすごく難しい!!いつからかなんて覚えてない!!

 

 

って思いました。

 

2日前に食べた夕飯の主食とおかず全部思い出すのも大変ですよね、それに似てるかなと思います。

 

 

 

 

もう1つ、今後コロナ関係などで遠隔診療やリモート、オンライン診療が発達していくのであれば、上に書いた質問事項などは今後これまで以上に文章化され、診療の事前に記載式になっていくのではないかと思っています。

 

例えばインターネットで問診票を記載送信しておいて、診療自体は、足りないところのみ医師が追加で問診+診察するだけ、など。

 

またこれは、コロナにおいて、いつどこの医療機関に誘導するか、疾患を事前に想定することで大事になってくると思います。

 

 

 

 

 

明日から役立てる内容ではないと思いますが、非医療者にとってはなるほどと思ってもらえれば、医療関係者の方には懐かしいなあっで思ってもらえたら十分です(笑)

 

今日はペンギンです。

 

 

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