こんにちは、うしです。
今回は、前回に関連して、12誘導心電図の読み方を書かせてもらうと思います。
自分は合計して10冊以上心電図の本を読みましたし、学生の頃に病棟の患者さんの心電図読影など行っていました。
今ではYouTubeでもたくさん心電図の解説動画があり、わかりやすいなあと思います(笑)
ただし、あまり本にも書いていない、歯がゆいことがたくさんあります。
それが、心電図をとった目的が書かれていない!、ということ。
今回は、循環器以外のスタッフ向けに、目的ごとに心電図の読むポイントを解説したいと思います。
細かい心電図の読み方や波形の形などはほかの記事を参照いただけたらと思います。
その前に、心電図は12誘導心電図ともいい、たくさん電極を装着します。
心電図の基本的なメカニズム(肢誘導と胸部誘導や刺激伝導系など)難しい内容は割愛し(知っていればなおよし)、とにかく現場に役立つように書いておきますが、
最低限、
・心房→心室(右房→右室/左房→左室)に電気と血液は流れている
・P波は心房、QRS波は心室、T波は再分極(心室の電気がもとに戻っている)
は、イメージしておきましょう。
【健診の心電図(無症状)】
これは実は一番難しいです。というのも、健診というのは病気がないか引っ掛けるもので、病的意義のないものも一旦は異常疑いと判断しないといけません。
1つの誘導で異常所見あっても見逃してはいけません。
P波の高さ幅、QRS波の高さ幅、PQ時間、ST変化、T波の高さ、U波の有無を全ての誘導で正常範囲かをみて、V1-6で形が自然に推移していればいいのですが、慣れるまでは結構難しいです。
ポイントは、正常心電図の形とどこか違えば異常、ということです。
もっと究極なことを言うと、よく心電図の左側に出てくる自動読影です。
自動読影は、異常の所見は全然参考になりませんが、正常を当てるのは上手です。なぜかというと、正常心電図と機械的に比べて、形が全く同じだからです。
これが健康というわけではありません。心電図が全く異常なくても回旋枝の心筋梗塞の場合心電図に全く変化でないこともあります。
とりあえず言えることは、無症状の人の心電図自動読影が正常であれば、ほぼ正常、ということです。
異常であれば、無症状であれば心電図を極めるメリットはあまりないです。「いつもよりここの波形形変だね~」程度でいいと思います。そして緊急性もないため、後日心エコーなどほかの検査を行いましょう。
【胸苦時】
これは圧倒的に心筋梗塞かどうかで急ぐかどうかも変わります。
心筋梗塞とは冠動脈という心臓の血管が詰まり、心臓が壊死して胸が苦しくなる病気です。命に関わります。
あとは実際に病歴や問診で何の疾患らしいかや、心電図施行時に苦しいかどうかによっても大きく変わります。心筋梗塞でも上記の通り、冠動脈の回旋枝が閉塞した場合は心電図変化がでないこともあります。自然に治ってしまったり、心筋梗塞なりかけの場合も心電図変化がないことがあります。
とりあえず、まずは全ての誘導でST変化が生じていないか見ましょう。できれば以前の心電図と比べましょう。どこかでの誘導でST変化が0.5mm以上あれば心筋梗塞の可能性はありです。何も変化がなくても心筋梗塞は否定できません(が、実際は心筋梗塞でないことが多いです)。症状の推移や病歴をみながら総合的に考えましょう。
たとえば肺塞栓(右室負荷所見)での心電図変化や心不全のときの変化(心房負荷所見)などもみえることがありますが、これは心電図診断ではなく病歴から診断すべきなので、自分は重要ではないと考えています。
【失神時】
これは失神しているときに心電図をとれたかどうかで大きく変わります
失神中(意識消失)の場合、QRS波形か普通に出ていれば、心臓由来の失神ではありません。てんかんなどを検索するべきです。
失神後の人の心電図は結構難しいです。失神するのは以下記載する頻脈か徐脈の不整脈のときで、特に徐脈の方が頻度は多いですが、いずれにしても今意識が戻ったということは心電図も戻ってしまっているということなので、あまりあてにはできません。
そもそも心臓由来の失神の際には病歴がすごーく大切なので、心電図は補助診断になります。無症状時と同様に、自動読影で正常であれば心臓は大丈夫そう、異常とあればなんとも言えない、失神したときの心電図がないとなんとも言えない、と考えてください。
【不整脈のとき(頻脈)】
失神やまたはモニター異常、検脈で心電図をとり、脈が速いときの読み方をします。
これはとりあえず、Ⅱ誘導だけ見ればいいです。Ⅱ誘導でP波が見えなければV1でP波が見えるかのみ探してください。
ちなみに頻脈の定義は、心拍数 100回/分以上としましょう。
流れとしては、以下で考えれば不整脈名は間違いないです。
①QRS幅がいつも通り狭いか
狭い→上室性(心房由来の)頻脈→②へ
広い→心室性頻脈(不整脈)→ ③へ
(ただしいつもQRS間隔が広いなら②の可能性が高い)
②P波はあるか、脈は不整か
P波(+)、脈整
→洞性頻脈か、心房粗動(AFL)
P波(+)、脈不整
→心房粗動(AFL)
P波(-)、脈整
→発作性上室性頻拍(PSVT)か、心房細動(Af)
P波(-)、脈不整
→心房細動(Af)
③QRSの形がバラバラか、脈は不整か
QRSの形がバラバラ
→心室細動(Vf)
QRSの形が均等、脈不整
→心房粗細動+変行伝導
QRSの形が均等、脈整
→心室頻拍(VT)か、②+変行伝導
このセクションでは不整脈の名前がわかればいいので、詳しい不整脈のメカニズムは教科書などの方が詳しいと思います。
上記補足としては、まず~か~と書いたやつはぱっと見は区別はほとんどわからないものだと考えてください。鑑別するには、過去の病気(既往歴)や薬剤投与したときの反応などを見たりもして区別しているため、心電図のみで判断しようと努力しなくてよいです。
心房粗動と心房頻拍は区別が難しいので、ざっくり心房粗動たちと考えましょう。
心房粗細動とは、そのまんま、心房粗動+細動のことです。
あと、変行伝導というのは、左脚ブロックと右脚ブロックのことです。次のブログで書く予定ですが、もともとある人もいるし、心筋梗塞によって生じる人もいるし、頻脈や徐脈になるときだけでる人もいます。とりあえずこの不整脈セクションでは、心臓の左か右の伝導が遅くなってまぎらわしいだけ、と考えておきましょう。
心室頻拍(VT)の隣に②+変行伝導とありますが、とりあえずVTだけ考えておきましょう。
頻脈については、もともとの病状にもよりますが、心室細動と心室頻拍でなく、症状や血圧低下などなければ1日程度は経過観察でも問題ないことが多いです。
【不整脈のとき(徐脈)】
失神やまたはモニター異常、検脈で心電図をとり、脈が遅いときの読み方をします。
これもⅡ誘導だけみて、P波の確認のためだけにⅡ誘導で見にくければV1を見ればいいです。
徐脈はだいたい心拍数 50回/分以下のときのことを言います。考え方は頻脈と似てはいます。以下がポイントです。
①P波のあとに必ずQRS波があるか
P波の後にQRS波ある
→洞不全症候群 →②へ
P波の後にQRSが欠落する時がある
→Ⅱ-Ⅲ度房室ブロック→③へ
そもそもP波がない
→心房細動 + α
②洞不全症候群の分類
ただ遅いだけ →Ⅰ群(=洞性徐脈)
不整に遅い →Ⅱ群
頻脈後に遅い(止まる)→Ⅲ群(=徐脈頻脈症候群)
③房室ブロックの分類
少しずつP-QRS間隔が開いてQRS欠落
→ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロック
突然たまにQRSが欠落
→モビッツ型Ⅱ度房室ブロック
PとQRSがバラバラ
→Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)
(*Ⅰ度房室ブロックはP-QRS間隔が1cm以上のことですが徐脈にはなりません)
だいたいこんな流れを組めばよめると思います。
補足として、まずは「そもそもP波がないときの心房細動+α」ですが、(頻脈のときはわかりにくいですが)頻脈でないときの心房細動とは基線がユラユラして脈が不整になるので、それでわかります。ただし脈が整な心房細動=完全房室ブロック合併になるため、元々心房細動の人が徐脈になった場合、+αが完全房室ブロックになることがあります。
あとは一般的な徐脈の分類なので、いいでしょう。
【動悸のとき(脈が不整で気持ち悪い)】
これも問診が大事なので難しいです。動悸の患者さんには「脈が速くて動悸しますか、遅くて動悸しますか、それとも不整で気持ち悪いですか、それとも1拍が大きいですか、それとも息切れや胸が苦しくて動悸しますか」と聞きます。
脈が速いなら頻脈へ、遅いなら徐脈へ、1拍が大きいなら多くは非心臓疾患(または心因性)、息切れや胸が苦しいなら胸苦のセクションへ進んでください。
ここでは脈が不整で動悸を感じるときとして進めます。おそらく脈が不整で気持ち悪いのであれば、心電図でも脈が不整なはずなので、不整になるのを待ちましょう。
ただしこの動悸のセクションは、フローチャートにするのは難しいため、波形を形で覚えた方がいいです。とにかくこの形だけ覚えましょう。
そのうえで、一応フローチャートも記しておきます。動悸時(=脈が不整時)において、
①P波がない+QRSが同じ形で不整に持続
→心房細動(Af)
②P波がない+QRS幅が広い
→心室性期外収縮(PVC)
③P波がある(少しP波が不整)+QRSが同じ形
→心房性期外収縮(PAC)
心房細動は難しい不整脈ですが、とりあえず①のように考えましょう。ただし、常時心房細動ある人は動悸を感じません。新規に動悸を感じているのであれば、胸苦に準じて考えましょう。
期外収縮とは、単発のフライングのことです。②については、連発した場合は頻脈のセクション(つまり心室頻拍か変行伝導)と考えてください。
③については、期外収縮が連発で続くと判断難しいです。P波がはっきり見えず心房細動と区別つきにくいです。頻脈で出てきた発作性上室性頻拍(PSVT)とも区別つきにくいです。また心房細動が出て頻脈になったときに変行伝導がでてQRS幅が大きくなり、心室性期外収縮連発(≒心室頻拍)に見えることもあります。例外はたくさんあります。
とりあえず、1回の心電図では全く判断つかないことがあります。わかりやすいところで考えましょう。
QRSの形が同じであれば、何はともあれ上室性(心房由来)と言えますね。
あとは、動悸自体が脈の結滞(一見徐脈)で感じるときでも、実は心房性期外収縮で、そのP波が心室の不応期のため心室の拍動がない、というパターンもあります。よく見ないとP波が見つかりません。
このくらいかと思います。
あと思いついたのあれば追記します(笑)
初学者にとってはむしろわかりにくかったかもしれません、すみません(笑)。
何がいいたいかというと、心電図の原理や病態を理解しきるのは難しいため、症状や目的ごとに見るポイントを考えよう、ということです。
よく心電図でST上昇→心筋梗塞と思うことがあると思いますが、胸痛の人と健診の人では解釈がまるで変わります。
そして、それだけだと、実臨床では全然読めないと思います。教科書の波形はわかりやすいところをピックアップしているため、患者の一瞬一瞬の波形は非常に多彩だからです。
とりあえず、心電図は検査手段であり、臨床経過によって解釈は変わるため病歴が大切である、ことが伝われば十分だと思います。
心電図を読むときに、1つのやり方として、症状別にみるとどう見たらいいかわかるのではないかと思って書きました。
心電図波形ごとのチャートではないため写真を適宜張るのは難しかったため文字ばかりですみません。
心電図をみて、上記チャートみて、波形を(それこそGoogle先生などで)調べてみてもらえたらよいです(笑)
少しでも役立てられたらよいです。
今日のインコは、肩に乗っています。