こんにちは、うしです。
今日はちょうど以下のような記事が出たので、Apple Watchの心電図の続きとして、循環器内科目線ですげ書いてみました。
医療関係の方はもちろん、Apple社に興味ある方は特に前回に引き続き読んでもらえたら幸いです。
新 アップル ウオッチに 「コロナとの 戦いに 役立つ機能」 搭載へ
https://forbesjapan.com/articles/detail/36230
記事としては、新しいApple Watchのしんきのうとして、血中酸素飽和度が測れるらしい!ということです。
血中酸素飽和度(SpO2)とは、心臓から全身に運ばれる血液の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているか、皮膚を通して調べた値です。
ざっくり言うと、血の中に酸素がどのくらいいるか、という指標で、生命(の臓器)が生きていくためには最低約90%は必要で、正常値は96-99%くらいです(100%でもいいですが、やや過換気ですね)。
この血中酸素飽和度(業界用語では「サーチ」と読んでます)を測るのがパルスオキシメーター(サーチモニター)です。
こんなやつですね
、、
*情報と画像は日本呼吸器学会ホームページより引用
これかどんな役割を果たしうるのかを段落ごとに書いていきます。
①血中酸素飽和度(SpO2)が低下したら?
どんな機能、性能になるかはわかりませんが、血中酸素飽和度が常時測れて監視できるんだと思います。
ただし、僕たちがつけてみても、ほとんど97-98%から変わらず、とりあえず全く面白くないです(笑)
(自分も自宅にパルスオキシメーター(サーチモニター)は持ってますが、普段は役にも立たず面白くないので使ってません)
なんとなく他の記事などには、「酸素化が測れるので素晴らしい!コロナも怖くない!」ように見えますが、そんなことはありません。難しい問題があります。
まず1つが性能です。
SpO2とはかなり変動するものかつ、きちんと測れていないと低く出たりします。日常診療でもうまく測定できないことがあり難渋することがあります(特に手先が冷たいときなど)。
腕時計型だと尚更精度を維持するのが(Appleの技術だとしても)難しいのではないかと思います。
(心電図(心拍数)の方がとりあえずは技術的に簡単だと思います)
次に、解釈です。
数字が低下したらどうしますか?
本当にSpO2 90%以下が続けば命に関わります。
Apple Watchが90%以下をしましたらどうしましょう。誤作動かもしれません。
というのも、基本的には、呼吸器疾患・症状というのは、自覚症状が一番大事です。
普通の診療であれば、息苦しいなと思ったときにパルスオキシメーターでSpO2を測定します。低ければ酸素投与を開始します。この流れを知ってるから、うちは一応パルスオキシメーター(サーチモニター)を買いました(笑)
これは民間レベルではありませんし、息苦しくなければおそらく酸素の値の低下は誤作動です。もちろん自宅には酸素ボンベなどありません。
なので、一般の範疇では、これもまた何の目的もわからずつけていると、なんとなくの不安感(もしくは安心感)があるだけのような気がします。
②コロナ禍で使用しうるか?
もちろん使えないことはないと思いますが、一般には①の通り解釈に難しく、限定的なのではないかと思います。
可能性があるものの1つとして、海外で突然人が倒れ亡くなっていく動画?が話題になりました。コロナ感染のようです。
あの死因が何か聞いたことはありませんが、多分低酸素血症なんでないかと思っています。酸欠で呼吸器が苦しくて、最後は意識がなくなり倒れてしまって、そのまま酸欠で亡くなっているのではないかと思います。
しかし理由は様々でも、病院までアクセスできない人がApple Watchにアクセスするのは現実的ではないと思います。
全員が貧困層ではないと思いますが、Apple Watchを持つ多くの人は富裕層で、通常であれば呼吸苦が出現し、病院に駆け込むと思います。
もし完全に医療破綻して救急車もこなく病院も全く機能していないのであれば、Apple Watchで酸素の値が低いと訴えても医療提供まで届くことはないと思います。
そういう理由でApple Watchがあればコロナは大丈夫とは言えないとおもいます。
コロナの騒動で、サーチモニターが通販サイトなどで激売れしてます。現状だとこのセールスブームに乗っかっただけのように思えてしまいます。
ではサーチモニターの役割にはなりえないのか?
これも、自分はサーチモニターで十分かたら思います。
医療機関以外でサーチモニターを持っている人は、喘息や肺気腫、間質性肺炎などの肺の基礎疾患を持つ人が多く、ただの風邪でも重症化するがあります。
ただし、ただの風邪のこともよっぽど多いです。
例えば、風邪引いたけど少しぜいぜいするような気がするとき、サーチモニターを図り、少しでも酸素の低下があれば医療機関を受診し、肺炎など起こしていないか検査するという方法があります。
施設などでも見受けられます。
悪くはないのですが、そうであれば息が苦しくて酸素の値が低ければ病院にいくというプランが立ったときのみ測定すればいいと思います。
少なくても24時間測定することはかえって考えをややこしくします。
③Apple Watchの測定は役立たないのか
実はそんなことないと思います。
目的をもち、できることできないことなどをしっかり区別すればすごくいいものだと思います。
1つは、医療者などです。
ボランティアになってしまうかもしれませんが、普段Apple Watchを医療者が使用し、例えば人が倒れていたり、呼吸が苦しい人がいたときに、つけさせてみるということです。
特に、出先で、喘息の友人が少し息苦しい、というときに、緊急性があるかをみるのにはいいのではとおもいます。
(普段サーチモニターを持ち歩く医療者はいませんので)
次に、無呼吸の検出です。
心電図のときの不整脈にも似ていますが、睡眠時無呼吸症候群では自分では気が付きにくいですが、しっかり治療が必要な病気です。
しかし、いきなり病院に入院して検査するのも躊躇われます。
Apple Watchをつけて夜酸素の数値が低ければ睡眠時無呼吸症候群の可能性があるので耳鼻科に受診を勧める、というのは理に叶った使い方かと思います。
ただし、せっかくApple Watchを買ったのに、なんか切ないですね(笑)
最後は、喀痰や食べ物などの窒息の早期発見です。
誤嚥のリスクが高いおじいちゃんおばあちゃんが近くにいる場合(一緒に暮している場合)、酸素の値が急激に下がった場合、実は窒息している可能性があります。その検出にはすごくいいと思います。
しかし問題なのは、窒息は一瞬のことなので、本当にその目的で使用するのであれば、酸素の数値が下がったらすぐにおじいちゃんのもとへ駆けつけないといけないです。
これは現実問題難しいとおもいます。
あとは、介護職や医療現場の使用です。
上記のような使い方で行えば、施設や病院内の窒息などは早期発見しやすい可能性があります。
ただし、その場合は大量に腕時計型のサーチモニターが必要になります。これではもはやApple社のブランドにも影響しかねますし、普通に医療メーカーが作りそうです(笑)
1つの可能性として、
コロナに感染し、ホテルや自宅待機している若年者がApple Watchでサーチモニターがついていれば、それを遠隔モニタリングして、低下してきたら肺炎になったおそれがあるということですぐに呼び出す、という使用方法は今後ありえるのではないかと思っています。
(と伝えれば自宅にいるコロナの方も遠隔で見てくれてると思うと少しは安心でしょう)
まとめると、
パルスオキシメーター(サーチモニター)は本来呼吸器症状があるときに測定するもので、
24時間酸素の値を測定するのは、無呼吸か、本当に窒息の監視などの厳しい病状のとき以外はあまり有効ではないと考え、
若年者のApple Watchの進展が、例えばコロナ診療の遠隔モニタリングの管理の手助けにしうる可能性はある
と言った見解とさせてもらいました。
やはり、Appleは酸素が測りたいのではなく、少しずつヘルスケア部門に乗り出しており、
その1ステップというだけなんだろうと思っています。
今日はクリスマス仕様です。
覚えてたらクリスマスにまた使用します(笑)