こんにちは、うしです。
最近のコロナの話から少しはずれて、今回は循環器らしいこととして、モニター心電図のことについて書いてみようと思います。
今回は少し医療者向けかもしれません、その他のDr.には少し恥ずかしい記事かもしれませんが、間違っていてもそっとしておいてあげてください(笑)
そして、次の記事でApple Watchの心電図について書こうと思っており、その準備記事でもあるので、医療者でなくても、読み物として読んでもらえたら幸いです。
モニター心電図の読み方 → モニター心電図の解釈
ということで、書いていきたいと思います。
*ただし、あくまで自分の主観、かつ自分の施設に似た環境での話のため、基本的には自分の施設通りに、また不明点は主治医や当直医に相談ください。
ちなみにモニター心電図というのはこれです。
あのドラマとかで良く出てくるやつ(笑)
ちなみに、モニター心電図ってなぜつけると思いますか?
これ実は自分も教わったことはなかったはずです。
(うちの病院の教育が悪いとは言わないでください)
これとても重要だと思いますが、結構なーなーになっているのではと感じています。少なくても医者から他職種に「モニターはこういう理由でつけています」と毎回必ず記載する文化のある病院は少ないと思います。
モニター心電図をつける目的はだいたい以下なのではないかと思います。
①不整脈を検出する
最も通常の仕方です。ただし循環器病棟以外は少ないと思います。
よく、「このモニター波形どうですか?」と聞かれますが、モニターからはなんの不整脈かはしっかりわからない、と考えてもらった方がいいと思います(質問してもらうのは全然OKですが(笑))。基本的には12誘導心電図が必要です。変だなと思ったら、またはモニター装着の目的の不整脈らしきものが検出したら12誘導心電図をとって翌日でいいので相談するのがいいと思います。
そして不整脈を検出するのものの目的(具体的な不整脈名)もイメージすることが大切です(循環器病棟ではこれが一番大事なのではないかと思います)。
自分がイメージする具体例を挙げてみます。
・心臓の動きが悪い人…原因としての頻脈や、結果としての心室性不整脈検出
・アブレーション後の人…術後再発評価
・失神精査の人…失神の原因としての徐脈や心室性不整脈の検出
・心筋梗塞の人…結果としての心室性不整脈の検出
ぱっと思いついたのはこんな感じ。病棟の看護師さんの計画に上記が入っているとさすがだなと思います(笑)
逆に、不整脈があった際に例えば頻脈発作の場合、発作性心房細動なのか、発作性上室性頻拍なのか、心房頻拍なのかは判断難しいです。細かい不整脈名が知りたい場合や、明らかに新規不整脈が出た場合は(不整脈を検出する目的でモニター心電図をつけているのであれば)、12誘導心電図をとるべきかと思います。
徐脈も同じです。それが洞停止なのか房室ブロックなのかはモニターだけではよくわかりません。それが目的(もしくは高度や頻発)なのであれば12誘導心電図が必要です。
緊急性はなさそうだけどよくわからない波形が出たら、日中相談し、その波形の正体が大事であるなら、次でたときに12誘導心電図をとってもらえばいいのではと思っています。
(もし今回の記事が好評だったら具体的に頻脈や徐脈や、緊急時のモニターの対応は別の記事で書こうかと思います)
②虚血を検出する
心臓の冠動脈の血流低下(≒虚血)でST変化をみる目的です。ただしこれは本来の目的とは違います。ホルター心電図の場合はすぐに医療者に報告できないためしばしば有効ですが、入院中であれば12誘導心電図をとればいいだけなので、症状が出たら12誘導心電図をとればいいと思います。モニター心電図のSTは誘導によっても大きく違い、大ごとになるだけで業務負担も増えるので不適切と思っています。
(ただし、たまーに入院中の無症状心筋梗塞やたこつぼ型心筋症が見つかるので、④と合わせてとりあえずつけておいて、見つかってよかった、ということはしばしばあります)
③安心のため
非医療者には少しむっとされるかもしれませんが、実際に病院に来る人は心配性な人や、実際に病気がないのにあると思い込んでいる人も多数います。
モニター心電図があると、(少し趣旨とずれますが)漠然とは体調悪化がないことがわかり、どこも悪くない患者さんの「動悸がつらい!」に対しては安心させられるのではと思います。④の急変を感知するのではなく、とりあえずモニターをつけて変わりないと、目が届きにくい患者に対するスタッフの安心にもなると思います
④急変感知のため
③とも似ていますが、実際はこれが多いのではないでしょうか?でもこれのどこを見るのでしょうか。極端にはなりますが、心停止(やそれに準じた心室細動)が万が一生じていないか(朝になったら知らぬうちに亡くなっていたなんてはあってはならない)の超早期発見という目的なら理にかなっていると思います。
そこまででなくても、洞性頻脈。これは、交感神経が高まっているということなので、たいていは不調の指標になります。βblockerなどの薬剤や元々洞不全症候群の素質ある場合などは参考になりませんが、ベッドで安静にしているのにしばらく前よりも脈が20bpm以上上がったら異常としたら、それなりに急変の早期発見のためのツールになると思います。
逆にいうと、急変しそうで心配だから念のためモニターをつけたのであれば、洞性頻脈もきちんと見るべきかと思います。
ただし、洞性頻脈の状態でも自然にでも起こりやすい心房細動(Af)や上室性心室頻拍(PSVT)などは体調不良なのか、たまたま今おきたのか、わかりにくいです。
こちらも、もし今回の記事が好評だったら後日AfとPSVTのことは別記事に書きたいと思います。
⑤酸素化の常時評価のため
これは心電図モニターではなく酸素モニターになります。HOT調整の24時間酸素化評価や、あとは呼吸状態の悪い人への痰詰まり(もしくは呼吸状態悪化)の早期発見には必須と思います。ただしこの際には心電図モニターは本来は不要と思います。
実際はセットになっていることが多いです。④の急変感知と合わせて使用するのがいいかと思います。
⑥その他
例えばペースメーカー挿入直後のリードの脱落検出など、珍しいものもいくつか挙げられます。心臓に限らず術後にルーチンでつけていることも多いと思います。それは③と④の理由かもしれませんが。
つまり何がいいたいかというと、
主治医は(無意識でも)モニターをつけようとしたことに対して目的があるはずです。
それを、例えば入院時、モニターを装着する際に少し共有できればより良い診療につながるのではないかと思います。
実際よくあるのは、
安心のためにつけたモニター心電図で、無症状の(おそらく自宅でも、以前からあるような)些細な不整脈を見つけてしまい、抗不整脈静注をする
一見正しいようで、確かに患者さんを治すための診療かもしれませんが、実は目的と結果が合っていないんです。主訴と目的が合ってないと、思わぬ合併症や不測の事態になったり、本来の目的を見失ったり(例:安心をえるためのモニターだったのに軽い不整脈に固執してかえって不安になる、など)、いいようでかなり患者さんに不利益があるのです。
なんだったら入院患者全員にモニター心電図つけて、「こんな怖い不整脈を見つけたため再入院で治療しましょう」なんて言ったら金儲けができてしまいます(そんな病院はないと思いますが)。
まあほっておくのも人道的におかしいし、夜でも当直医に一言相談なんて全然いいと思うので、とりあえず心電図装着の目的と合っていない現象とさえ認識できていれば、診療がスムーズになると思います。
モニター心電図をつける際には、どんな目的で、不整脈であればどんなものをみたくて、そしていつ外すのかを、みんなで共有していくのが大切だと思います。
今日のインコも忘れずに添えておきます。